入居率や賃料維持の目的から、中古オフィス・企業ビルのリフォーム需要が高まっていると言われています。
リフォーム箇所として各所で増えているのが、トイレのリニューアルです。特に、女性トイレのリニューアルがビルの価値を向上させるのに大きく影響すると言われています。
従来トイレは「3K」と呼ばれる「臭い」「汚い」「暗い」の問題を抱えており、この3点が当てはまるようなトイレのある企業ビルの入居・稼働率が改善することは少ないでしょう。
そうした理由から、入居条件としてトイレのリフォームを要求する企業が増えています。
ある企業ではオフィス選びをする際、事務所スペースと共に必ずトイレを確認すると言われており、
トイレの設備や衛生管理が充実していることがオフィス選びの重要なポイントになっています。
こうした傾向からか、老朽化対策としてではなく、入居率の増加を目的としておよそ築20年でトイレをリフォームするビルオーナーが増えています。 今後はさらに、女性や障害のある方々の社会進出にともなって、トイレ設備の充実を図る動きは大きくなってくるでしょう。
また、改修工事に伴う場合の費用ですが、資本的支出には当たらないため減価償却には該当いたしません。
ビルのトイレリフォームで特に力が入れられているのが、女性トイレです。その中でも、お化粧直しをするための「パウダーコーナー」の設置は、トイレ空間を高級感のあるものに仕上げ、クオリティを向上するための重要なファクターとされています。 鏡のサイズを個別化することで、化粧時に隣の人の顔が写り込むのを防ぐなど、プライバシーに配慮した工夫がなされています。
個室のセキュリティやプライバシーにも配慮するため、今まで天井付近は空いていた仕切りも完全に塞がれるようになりました。
さらにトイレ内の混雑を避けるため、洗面台の用途を絞る意味で従来の洗面台とは別に「歯磨きコーナー」を設けている所もあります。
また、温水洗浄便座やエチケット用の擬音装置などの設置はすでに常識となっており、近頃増えているとされるのが、トイレ内に設置されるロック機能付きの「個人用収納ケース」です。 メイク・歯磨き道具を持参する女性が多いことが設置の理由となっており、人の出入りが激しいビルだと鍵付きの収納ケースは防犯上安心できると好評価とのことです。 最近は制服の廃止と共に、更衣室をなくす企業が増えつつあります。その影響を受けてか、ストッキングなどの履き替えにトイレを利用する女性が増加しつつあります。こうした変化から「フィッティングボード」と呼ばれる、折りたたみ式の着替え台が商品化されています。
このように、めまぐるしい勢いで変化していくトイレ環境ですが、さらにトイレのクオリティを上げようと「メイクアップ用ライト」を備えた鏡の設置や、壁面を木目調にして高級感を演出し、間接照明を用いた癒し空間を演出するなど、今後さらに快適空間としての進化を遂げそうです。
従来トイレは、リフレッシュ空間として認識され続けてきましたが、快適性を追求する中で居室空間に近いリラックスを得る空間へと進化しつつあります。これは、仕上げ素材やインテリア選択の幅が広がったことが理由とされます。
そのような中で、企業ビルのトイレのイメージが変わっていった大きな要因のひとつとして、清掃方式の変更があります。
和式が多かった頃は、水を撒いてブラシで磨いていくという「湿式清掃」でした。しかし、水を散布することにより、靴底の汚れが床全体に広がってしまうため、汚れ・異臭を引き出す原因となることも多くありました。 便器が和風から洋風に変わることで、湿式清掃から乾式清掃と変わりました。これにより床の排水溝が撤去され、デザインが変化し始めることになります。 仕上げ材の変化にともない衛生的な空間へとシフトすることで、不浄な空間とされていたトイレが、居室のようなリラックスできる空間に近づきつつあるのです。