No.46

世界のトイレ事情
日本とは違う海外のトイレ文化と使い方

世界の国旗がはためいている様子

日本に住んでいると、トイレは「水を流して、トイレットペーパーで拭く」という使い方が当たり前に感じられます。

ところが、海外に目を向けてみると、トイレの形や使い方、水の使い方、排泄物の処理方法などにはさまざまな違いがあります。

しゃがんで使うトイレもあれば、洗浄用の水を使う地域もあります。

一方で、日本では一般的になった温水洗浄便座のような設備が、海外ではまだ珍しい場合もあります。

今回は、旅行などではなかなか知ることのできない、世界のトイレ事情とトイレ文化について見てみましょう。

まずは、日本のトイレから考えてみましょう。

現在の日本では、洋式の水洗トイレが一般的です。

さらに、温水洗浄便座、暖房便座、脱臭、便座の自動開閉、節水機能など、さまざまな機能を備えたトイレも珍しくありません。

特に温水洗浄便座は、日本のトイレを象徴する設備のひとつです。

TOTOが温水洗浄便座「ウォシュレット」を発売したのは1980年。その後、さまざまなメーカーから製品が登場し、日本のトイレは大きく進化してきました。

海外から日本を訪れた人にとっては、便座が温かかったり、ボタンを押すと水が出てきたりすること自体が驚きになることもあります。

日本人にとっては当たり前の機能が、実は世界的に見るとかなり特徴的なのです。

日本でも昔から使われてきたのが、いわゆる和式トイレです。

便器をまたぐようにしてしゃがんで使用するタイプで、現在の日本では数が減ってきましたが、駅や公共施設などで見かけることがあります。

このようなしゃがみ式のトイレは、日本だけのものではありません。

アジアや中東、アフリカなど、さまざまな地域で使われています。

ただし、しゃがみ式だからといって、すべて同じ仕組みというわけではありません。

水を流すタイプもあれば、バケツなどを使って水を流したり、排泄後の洗浄に水を使ったりするタイプもあります。

「トイレ=便座に座るもの」という感覚は、世界共通ではないのです。

日本では、排泄後にトイレットペーパーを使うのが一般的です。

しかし世界には、水を使って洗う文化もあります。

地域によっては、トイレの横に小さなシャワーや洗浄用の器具が設置されていたり、水をためる容器が用意されていたりします。

日本の温水洗浄便座も、広い意味では「水で洗浄する」という考え方のひとつです。

つまり、

紙で拭く文化

と

水で洗う文化

があり、さらに両方を組み合わせる地域もあります。

どちらが世界共通というわけではなく、宗教や文化、生活習慣、利用できる水や衛生設備などによってトイレの使い方は変わってきました。

海外旅行で特に注意したいのが、使用済みのトイレットペーパーを便器に流してはいけないケースです。

日本では使用済みのトイレットペーパーをそのまま水洗トイレに流すのが一般的ですが、国や地域、建物によっては配管や下水設備の事情から、紙を便器に流さず、備え付けのごみ箱に入れる場合があります。

「水洗トイレだから紙も流せる」とは限りません。

海外旅行では、トイレ内に貼られた注意書きや案内を確認することが大切です。

こうした違いは、単に「海外のトイレは変わっている」という話ではありません。

建物の配管、下水処理、利用できる水の量など、地域のインフラとも関係しています。

日本では、駅や公園、商業施設などに無料で利用できるトイレが多くあります。

一方、海外では、場所によって有料の公衆トイレを見かけることがあります。

料金を支払って利用する方式で、入口に係員がいたり、自動のゲートが設置されていたりするケースもあります。

ただし、

「有料だから必ずきれい」

とは限りません。

有料・無料という違いだけでなく、清掃の頻度、管理体制、安全性、設備の状態などによって使いやすさは変わります。

海外でトイレを利用するときは、料金の有無だけで判断せず、現地のルールに従うことが大切です。

以前の海外トイレ紹介では、中国の公共トイレについて、仕切りの少ないタイプなどが紹介されることがよくありました。

確かに、国や地域によっては、日本とは大きく異なる公共トイレが存在します。

しかし、中国のトイレ事情も昔のイメージのままではありません。

近年は公共トイレの整備や衛生環境の改善が進められており、都市部を中心に設備やプライバシーへの配慮も変化しています。

そのため、「中国のトイレはこういうもの」と一括りにすることはできません。

これは中国に限らず、海外のトイレ事情全般にいえることです。

同じ国の中でも、都市部と地方、空港やホテル、観光地などでは設備が大きく異なることがあります。

ここまで紹介してきたのは、主に「どんな便器を使うか」という違いでした。

しかし、世界のトイレ事情を考えるうえで、もっと大切な問題があります。

それは、そもそも安全に利用できる衛生設備が十分に整っていない地域があるということです。

WHOによると、2022年には世界人口の57%が「安全に管理された衛生サービス」を利用していました。

一方で、15億人を超える人々が基本的な衛生サービスを利用できず、4億1900万人は屋外で排泄していたとされています。

つまり、世界のトイレ事情は「日本とは違う珍しい便器がある」というだけではありません。

トイレを安全かつ衛生的に使える環境そのものが、世界共通の課題なのです。

日本のトイレについてもう一つ特徴的なのが、さまざまな人が利用しやすいように工夫されていることです。

例えば、公共施設では車いす利用者に配慮した広いスペース、手すり、ベビーベッド、オストメイト対応設備などを備えたトイレも増えています。

視覚障害者向けの案内や、緊急時の呼び出し設備などが設置されている場所もあります。

日本の公共トイレは、「きれいで高機能」というだけでなく、できるだけ多くの人が使いやすい場所へと進化しているのです。

海外のトイレを見ていると、「日本とはずいぶん違うな」と感じることがあります。

しかし、海外から日本を見ると、日本のトイレもかなり個性的です。

こうした機能は、日本では身近になっていますが、海外の人にとっては驚きの対象になることがあります。

日本の温水洗浄便座などは海外でも知られるようになっており、日本のトイレ技術が海外へ広がっている例もあります。

トイレは、単に用を足すための設備ではありません。

そこには、

  • 水をどのように使うか
  • 排泄後にどう清潔にするか
  • プライバシーをどう考えるか
  • 公共空間をどう管理するか
  • 高齢者や障害のある人にどう配慮するか
  • 排泄物をどのように処理するか

といった、その地域の生活や社会の仕組みが表れています。

日本では「清潔さ」や「使いやすさ」に加えて、近年は節水やバリアフリー、省エネなどもトイレに求められるようになっています。

一方、世界では現在も、衛生設備そのものを整備することが大きな課題となっている地域があります。

そう考えると、普段何気なく使っているトイレも、実は水道や下水道、衛生、環境、文化など、さまざまな問題とつながっていることが分かります。

海外旅行に行ったとき、日本と違うトイレを見て驚くことがあるかもしれません。

「どうやって使うの?」

「このボタンは何?」

「紙は流していいの?」

そんな経験も、海外旅行のちょっとした思い出になるでしょう。

ただし、トイレの使い方は国だけでなく、施設によっても異なります。

分からない場合は案内表示を確認し、現地のルールに従うことが大切です。

日本のトイレが世界のすべてではないように、海外のトイレにもそれぞれの文化や事情があります。

世界のトイレを知ることは、世界の暮らしを知ること。

普段は何気なく使っているトイレですが、少し視点を変えてみると、なかなか奥深い世界が広がっています。

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